(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

オズの魔法使 / いつまでも色褪せない魔法の世界

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 まず、これが1939年の映画ということに驚きである。当時としても珍しいフルカラーでの製作。原色を散りばめたカラフルな映像は刺激的で見ていて疲労するが、現実離れしたオズやエメラルドシティの世界観にピッタリだ。カラー撮影なので"黄色いレンガの道"がしっかり黄色である。白黒じゃない。その美しさは2016年の現在で見ても素晴らしい。第二次世界大戦開戦の年にこのクオリティを作った国と日本は戦ったんだと考えると、ずいぶんムチャをしたんだなあと思ってしまう。

 カンザスに住む主人公のドロシーには肉親がいない。育ての親も自分を大事にしていないように思える。虹の向こうにもっといい世界があると夢見る少女は、嵐の夜に、魔法の国オズへ飛ばされることになる。そこで出会うのは知恵が欲しい案山子、心が欲しいブリキのロボット、勇気が欲しいライオン。ドロシーをカンザスへ戻す方法を知る魔法使いに会うため、4人はエメラルドシティへ向かう。彼女たちは様々な困難に出会うが、仲間を思い、知恵を出し合い、勇気を振り絞って問題を解決し、最終的しオズに出会うことができる。けっきょく彼からまともな話を聞くことはできないのだが、ドロシーたちは大切なことに気づく。案山子は優しいし、ブリキのロボットは頭がいいし、ライオンは勇気があった。そしてドロシーがいちばん好きなものは優しいおばさんと彼女が待つカンザスのおうちだということも。大切なものはすぐ近くにあって、それに気付けていないことも多い。もっと普遍的に言えば、しあわせなんて個々人の心の持ちようなんじゃないか。「やっぱりおうちがいちばん!」と唱えて3回靴を鳴らすと、ドロシーはおうちのベッドの上で目を覚ます。夢オチである。でも、大事なのは彼女がすべて自分の中で問題を解決したことであると思う。他人に誰か言われたわけではなく、ドロシーが無意識に見出した答え。内面の気づきだからこそ彼女は大きく成長したように見えるんだろう。

 音楽が素晴らしいのは言わずもがな。「虹の彼方に」は誰もが知っている名曲だ。切なくもロマンティックなメロディ、前向きな歌詞はいつ聴いても元気がもらえるし、感動する。各キャラが唄う「もしも〜があったなら」はちょっぴり物憂げで可愛らしいし、「オズの魔法使いに会いに行こう」は無邪気で子供らしい元気な歌。目だけでなく耳でも楽しめるのがこの映画のいいところだ。

 どうやら日本での知名度以上に英語圏ではこの童話は有名なようで(当然と言えばそれまでだが)海外のドラマや映画を見ていると「オズの魔法使」から引用したジョークをたまに見る。タイトルしか知らない…という人も多いが、勿体無いし今からでも遅くないのでこの傑作映画を見てほしいと思う。