(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

恋人たちの予感

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こんかいは軽く僕が好きな恋愛映画を紹介しようと思います。恋愛映画とひとくちに言っても様々あると思うのですが「恋人たちの予感」は〈男女の友情は成立するのか?〉という永遠の課題を扱った作品で、個人的にはとても興味深いアプローチです。ハリーは「男と女の関係は、セックスが邪魔をするから、友情には成りえない」と言うのですが、実際のところどうなのでしょうか。友だちと語り合うには最高の材料なんじゃないかと思います。

 

恋人たちの予感」というネーミングセンスにはなんともバブルらしい匂いを感じますね。原題は「When Hary Met Sary…」と韻を踏んでおり、だいたい「ハリーとサリーの場合は…」ぐらいの意味でしょうか?ハリーを演じるのはビリー•クリスタル。飄々としてちょっぴり皮肉っぽい。なに考えてるんだか読めない部分はあるんだけど、笑顔がとても優しいんです。あとかわいい。繰り出す言葉も知的で、一緒にいても飽きないだろうなあと感じます。サリーを演じるのはメグ•ライアン。いま整形?などもあって顔が変わってしまいましたが、当時は絶頂期です。メチャクチャかわいい。キュートで茶目っ気に溢れていて。しっかり者だけど、甘え上手っぽいところがあります。

 

正直、この二人の組み合わせは最初から「お似合いのカップルじゃん!」といった感じなのですが、なかなか恋愛関係には発展しないんですね。そもそも初めて会ったときのハリーに対するサリーの印象は最悪。そのあとの再会も、関係の発展には至らない。しかしサリーが落ち込んでいるとき、三たび現れたハリーが彼女の心を癒します。年を重ねて初めてお互いの相性に気づいたわけです。そこからは「友だち」として関係を築いていくのですが、やっぱりなかなか「恋人」にはなれません。

 

中盤の仲良しエピソードはとても楽しい。レストランで「女性のオーガニズムは演技か否か」というある意味しょーもないテーマで議論を交わすふたりの場面、特にオーガニズムに達する演技をして周りから白い目で見られるサリーなんてかなり有名です。あと電話越しに同じ映画を観たり、年越しパーティーに参加したり。お互い恋愛対象としては見ていなかったのに、共通の感動を重ねるごとに、ふたりはかけがえのない絆と友情を育んでいく。もしかしたら、そこには「恋愛感情」があったのかもしれないけど、そこはある種のタブーになってしまっていた。なんでも話せる間柄なのに、本当に大事なことは話せなかったんですね。なにか感じる部分があっても、無意識に封印してしまっていた。

 

その矛盾は、ふたりが勢いで寝てしまったときに一気に噴出します。サリーはそこでハリーに対する気持ちに気づく。しかしハリーはそれを認めたがらない。結果としてふたりの仲は険悪になり、離れ離れになってしまう。ハリーも「サリーのいない生活」を体感し、初めて彼女の存在の大きさを知ります。

 

そしてクライマックス、ハリーはサリーに会うため、大晦日の年越しパーティーに飛び込み、その想いを伝えます。その言葉がすごく良い。

 

「気温が22度あっても冷たい君が好きだ。サンドイッチの注文に一時間半もかかる君が好きだ。僕を馬鹿にしたように見るその鼻の上の小皺も好きだし、君と会った後僕の服に残った香水の匂いも好きだ。」

 

「一日の最後におしゃべりしたいのは、君なんだ。」

 

これまでクールにかましてたハリーがこれ以上ないぐらい早口に、必死になって愛の告白をしている。その内容もまた、相手を丸ごと受け止めて愛しているという宣言なのです。そして「一日の最後におしゃべりしたいのは、君なんだ。」という有名なセリフ。その日あった感動を分かち合うこともできるし、なによりそばにいることが幸せ。そんな人が一日の最後にいてくれたら最高だという、切実な気持ちが込められており、素晴らしい言葉選びです。ロマンティックコメディの王様、ノーラ•エフロンの脚本が秀逸なのは言わずもがな、心地よく気の抜けたビリー•クリスタルの熱演によって臭みや暑苦しさは抑えられている。絶妙なバランスの上に成り立つ名場面といえるでしょう。

 

本編中に何度も挿入され、最終的にハリー&サリー夫妻と合流する夫婦たちのインタビュー映像は、これからもふたりが円満な関係を続け、幸せに生きていくことを暗示するものとなっており、これまた非常に素敵。多幸感溢れるラストです。

 

語ってたらまた見たくなってきました笑 いまのところ僕の中ではベスト恋愛映画です。つぎはシン•ゴジラのまとめ記事を書こうと思います。