(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

WE ARE YOUR FRIENDS / EDMに賭ける青春

f:id:StarSpangledMan:20160630193303j:image

あらかじめ言っておくと、お金と時間の限られた現状で本作をみてしまったことを少し後悔している。基本的に映画館で観る作品は楽しむよう努力しているけど、「WE ARE YOUR FRIENDS」はその余地もなくただ退屈であった。どうしてなのか、まずはストーリーから見ていく。

 

全編を見通して感じたのは「サタデーナイト•フィーバー」のようだということ。決して裕福には見えない、有り体に言えば底辺に暮らす若者が夢を抱きながらも燻っている自分に不満を抱き、現実を忘れるため音楽に打ち込む。到底手の届きそうもないアッパークラスの女性に好意を抱き、グループ内の下っ端的な友人が事故で死に、その苦しみに耐えながらも前進することを決意する。刹那に生きる若者の悲哀を描いた両作はこんなにも共通点がある。

 

しかし「WE ARE YOUR FRIENDS」には残念ながら「サタデーナイト•フィーバー」のように惹かれる影もない。ただ退屈で間延びしている。おそらくいちばんの失敗点は主人公に共感しにくいことである。DJとして働くコールは女性にモテる。童貞拗らせたトラボルタとは大きな違いである。加えて金持ちの著名なDJに出会い、手取り足取り教えてもらい、その恩を忘れて女性を寝取るクズっぷりを発揮したと思いきや、友人が死んで落ち込んでいるので助けて下さいと泣きつく。一度は見捨てられたのに、なあなあでサマーフェスのステージに立つチャンスを得ている。たしかにコールは自分の未熟さを受け入れ、成長の兆しが垣間見えるものの、次なるステージへ跳躍するキッカケ自体は自分でもがき苦しみ掴み取るのではなく、他者から与えられるものである。単なるラッキーだ。そこに物語的なカタルシスはなく、「這い上がれるか」なんて言われても説得力がない。最初から最後まで恵まれたコールでは面白さがない。いっそコールが死んで、下っ端の友人がそれを叫んだ方が響いたかもしれない。

 

あとこの映画を見に来た人は何を期待するのだろう?ザック•エフロンのセクシーさを求めていた人は大いに満足できるであろう。しかしたぶん、多くの人はEDMのカッコよさを大スクリーンと大音響で楽しみたいと思うって劇場に来るんじゃないだろうか。しかし、その肝心の音楽シーンの演出が全く盛り上がらない。唯一、先輩DJの自宅のパーティーに呼ばれた際のダンスシーンは観る価値があった。コールが観客の心をつかむDJ術を語りながら、それを実践していくのだ。ここはなかなか興味深く、面白かった。他方、オープニングのクラブの場面はイマイチなにが行われているのかわかりづらい上、一曲フルで流すこともないから高揚感を得られない。ラストの友人に捧げる音楽も僕個人の感じ方ではあるけど、あまりかっこよくない。自然音をかき集めてメロディに生かす"独創性"が発揮されるシーンなのだけど、この境地に至るプロセスもそんなに自然ではなく、特に最後に感動を覚えるわけでもない。ものすごくぎこちなさを感じてしまった。

 

結局のところ、あまり好きなポイントも見つけられずに終わってしまった。平日昼の新宿に見に行ったらEDM好きそうなチャラめの客がたくさんいたけど、このテンポの悪い退屈な映画にガッカリしてないことを祈る。