(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

Netflix 火花 第3話 / 芸人としての未来

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第3話はスパークスがオーディションに挑戦して失敗を繰り返す様が描かれる。テレビに出たいという気持ちは常にあって、チャンスも与えられているのに、全然思っているような結果を出せないもどかしさ。本当は自分の実力不足のせいなのだけど、イライラが溜まってちょっと周りが悪いような気もしてくる。

 

夜の吉祥寺をぶらつき、上石神井にある神谷の家まで歩く場面は情感にたっぷり溢れている。長回しによって夜中の街の独特の緊張感や冷たさが画面を介して伝わってくる。手持ちカメラのブレが上手くいかない現実を忘れたくて酒に頼る徳永の心情とリンクしている。どことなくぼんやりした雰囲気の映像が酔っているときの感覚に近いようで堪らない。

 

徳永にとって神谷とその彼女と一緒にいるときが最も温かく、心休まる時間のようだ。先輩の家の布団に包まるとき、夕飯に招かれて一緒に鍋をつつくとき、初詣に3人で出かけるとき、徳永は安心しきった表情をしている。尊敬する人と大好きなお笑いについて本気で語り合う。自分を構成する全てが周りに揃っている気がして幸せなのだ。

 

徳永は神谷に安らぎを覚えるが、一緒にいて心が落ち着かないときもある。終盤、神谷はオーディションで居眠りする審査員に悪態を吐く。彼はウソがつけないし、自分が思ったことは表現しないと気が済まないのである。この不器用さは徳永を不安にさせ、彼の心をぐらつかせている。徐々に顕在化してきたふたりの差異が今後の関係性にどう影響を及ぼしていくのか、注目である。