(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

ラスト•アクション•ヒーロー / 映画愛の溢れたコメディ

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ハリウッド映画界きっての人気者、アーノルド•シュワルツェネッガー。オーストリアからボディビルダーとして渡米してきた経歴もつ彼の絵画の世界から飛び出してきたかのような迫力ある肉体とそれによって生み出される無敵の風貌は、強いヒーローを愛するアメリカ国民のハートをつかんで離さなかった。私生活のゴタゴタや州知事時代の様々な問題がノイズになることもあったが、それでも彼はアクション映画のナンバーワンヒーローであり続けている。

 

そんな彼を主人公に据え、パロディとオマージュを詰め込み、アクション映画ファンならクスリと笑ってしまいたくなるお手軽なアクションコメディに仕立て上げたのが本作。アーノルド•シュワルツェネッガーはなんと本人役だ。映画世界内でも大スターの彼が主人公を演じるアクションムービー(これまた紋切り型で安っぽい)にファンの少年が魔法の力で迷い込んでしまうというのが主なあらすじ。

 

とにかくメタ目線で捉えるちょっぴり皮肉っぽい笑いが魅力である。ハリウッド映画にありがちな御都合主義を、現実世界の人間が突っ込む。観客目線であるあるネタを攻めるのでとても楽しい。特に有名なところとして、ターミネーターがスタローンになっているポスターが登場する場面があるが、これは二人の関係性について知っているとますます笑えてくる。こういった小ネタは背景知識をたくさん持っていればそれだけ様々気付けるんじゃないかと思う。

 

しかし一方で本作は惜しい部分もある。ドタバタコメディにしてはストーリーが複雑、というか整理しきれていないため、中だるみが激しいということである。特に悪役に関しては、彼の面からメタ的なギャグを挟む機会がなかなかないためか、単なるステレオタイプのつまらないキャラクターにとどまってしまった。主人公の二人がお互いのいうことを信じ、助け合う関係になるまでの筋も少々ゴタついておりスッキリしない。

 

結局のところコメディとしては楽しいけど、映画の世界に少年が飛び込んでしまうという凝った設定を生かした新鮮なアクション映画を期待していた自分にとってはちょっと物足りない内容だった。しかし家族で見られる安心のおもしろさなので、ただそのビジュアル的な楽しさ、ギャグを素直に受け止めればそれで十分なのかなとも思った。なんでも小難しく考えたがるこの癖をなんとかしなければ…。