(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

インクレディブル•ハルク / MCU不遇の一作

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タイトルに不遇と付けてしまったけど、言うほど扱いが悪いわけでもない。ただ、ファンからも公式からも忘れ去られた地味な作品であることは間違いない。MCUが大好きでブルーレイで何度も見返す自分も、「インクレディブル•ハルク」だけは一度しか見ていない。エドワード•ノートンやティム•ロスなどキャストも演技派を揃えているのに、全く印象に残らない。あまり良かったところを覚えていないので、こんかいは少し文句が多めになるかもしれない。

MCU登場キャラクターの中では唯一、何度も実写映画化されているのがハルクというキャラクターだ。そのため「インクレディブル•ハルク」もアンリー版ハルク(未見)の存在を踏まえ、オリジンは冒頭の数カットで済ませてしまっている。この映画はブルース•バナー=ハルクのヒーローとしてのオリジンではなく、怪物になってしまったことによる悲哀を描くことに主眼を置いている。超人的な力を得たことによる苦しみは「スパイダーマン」を筆頭にヒーロー映画の定番テーマ。ハルクの場合は見た目自体醜く変わってしまうし、しかもその変化をコントロールできないので、フランケンシュタインのような異形の者の置かれる立場に寄り添った内容になっている。

ここからは不満が続く。たぶん自分がこの作品にいちばんに感じてしまう違和感はバナー博士がエドワード•ノートンであることだ。MCUを「アベンジャーズ」から見始めた身としては、マーク•ラファロ以外のバナー博士に抵抗感がある。どちらかというと細身のエドワード•ノートンが緑色のゴリラになる方がキャラクターのコンセプトとしては正しいのかもしれない。けど、彼は最初から気性の荒そうなイメージがあるので、ゴリラ化してもなんとなく納得がいく。温厚そうなマーク•ラファロが制御もできず街をメチャクチャにしてしまう方がやっちまった感が出て切ない。ここは完全に個人的な趣味だし、なによりキャストの変更も大人の事情によるものだから仕方のないことではある。

ただ逃避行劇としても地味で抑揚が少ない。「キャプテン•アメリカ/ウィンター•ソルジャー」が非常にサスペンスフルな政治スリラーを展開していたのに対し、「インクレディブル•ハルク」はうじうじとバナー博士が悩む様を見せつけられている気がして受け付けない。ヴィランのアボミネーションも正直あまり存在感がなく、ラストのハーレムでの戦闘に至るまでの過程にカタルシスを感じることもなかった。とにかく最初から最後までテンションが低く、暗いのである。

ベティとの悲恋要素はとても切ない。スティーブ×ペギーとは違った辛さがあって好みだ。ただキャスト変更もあってかのちのシリーズでこの設定が全く生かされていないのは悲しい。気付いたらナターシャといい感じになっていた。立ち直ったのか、部内恋愛に切り替えたようである。かといって本作の設定が完全に無視されているかというとそうでもなく、「シビル•ウォー」ではロス将軍が登場。このキャラクターはフェイズ3で大きな役割を果たしそうなので楽しみにしている。

 

ストーリーの細部に関する記憶が曖昧なので、少々抽象的な感想になってしまった。散々文句を言ってしまったけど、これを機に見直すのはアリかもしれない。