(旧)えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

ズートピア / キャラクターと世界観の魅力

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 前回の記事では現代社会における差別と偏見を扱った本作のテーマについて意見をまとめた。今回は映画を見ながら純粋に「ここ良い!」と思った点についてひたすらリストアップしたい。

 はじめはメインキャラクターのジュディとニックのはなし。ジュディはこれまでのディズニー作品の中でも屈指の魅力あふれるキャラクターだと思っている。それぐらい気に入った。顔のバランスの配置はいかにもディズニー風。耳の感情表現が豊かなところがかわいい。嬉しいとき、悲しいとき、びっくりしたとき。いろんな気持ちを耳の動きで表している。上の画像は急いでいるのにナマケモノの動きがトロいせいで仕事が進められず、イライラしている場面。垂れ耳でそのマイナスな感情が出ている。まっすぐで嘘をつけないジュディの素直な性格が耳からわかるのだ。また、自分の失敗に納得できずに一度警察を辞めてしまうなど、信念を曲げない強さにも惹かれる。悩むこともあるけど、それは自分の夢を貫きたいからであって、決してクヨクヨした弱さからくるものではない。素直で自分に正直な彼女をどうしても応援したくなってしまう。ぬいぐるみが欲しいです。

ニックは一筋縄ではいかないひねくれたところもあるけど、じつは思いやりに溢れた優しいイケメン。橋の下の場面、彼はジュディの謝罪を拒絶しようとする。でも本当は最初から彼女を受け入れるつもりだったのだと思う。ちょっと素直になれないところがあるから、そういう態度を取ったのだろう。彼女の心からの言葉をしっかり受け止めた後、抱きしめて頭を撫でてあげるシーンでグッときた人は多いはず。中盤のロープウェイの場面でも落ち込むジュディに自分の悲しい過去を打ち明け、元気づけようとする一面があった。押し付けがましくない思いやり、それをちょっと照れくさそうに見せるところが好きだ。それでいて子どもっぽくない。大人の余裕にあふれている。声優のジェイソン•ベイトマン/森川智之の演技も彼の良さを臭みなく表現していて最高だった。

 ふたりの関係性についても少し触れたい。映画が話題になり、多くの人がジュディ&ニックの恋愛を想像している。なんとなく自分はそれに乗れない。ふたりの絆は同じ痛みを乗り越えたものであって、その友情が恋愛感情によって邪魔?されてしまうことが受け入れがたいのだ。いちばんの理解者ではあるけど、お互いを仕事上の良きパートナーであり友人として付き合うふたりの微妙な距離感が爽やかで気に入っている。それ以上は求めたくない気持ちが強い。

 タイトルに世界観の魅力と入れたものの、その良さを言葉にするのは難しい。「たくさんの種類の動物が共存したら」をこれでもかと詰め込んでいる。単純にワクワクする。特に冒頭、ジュディが夢を胸に田舎から上京する場面で電車の車窓から見える景色は最高だ。圧倒的な情報量で観客を一気にズートピアの世界に引き込む。何回見ても新しい発見があるだろう。この作り込まれたディテールが物語にも説得力を与えている。本当にこんな世界がある気がしてくるのだ。

 ズートピアはビジュアルは可愛いしほのぼのした映画に見えて、案外その骨子はクライムサスペンスだ。巨大な陰謀を追う中でたくさんの冒険をし、自分も身の危険にさらされるというお話、考えてみればハードボイルド(ゴッドファーザー風のマフィアも出てくる)。次に何が起こるんだろうというドキドキがあるし、逆に内容を知っていても、犯罪者の追跡や潜入ミッションはダイナミックなアクションが展開されるし、緊張感が得られて楽しい。なにかとストーリー面の深さが話題になりがちだけど、最も基礎的な面白さがしっかりしているからこそなのだ。そこは忘れたくないと思う。

 ある程度自分の中で考えていたことはまとめられたのでここら辺で終わりにする。また何か思いつけば追加や記事に書き留めたい。