えいがのはなし

映画に対する感想を自由にまとめたものなのでネタバレを含むレビューがほとんどです。未見の方は注意してください!

あなたは「哭声 / コクソン」のなにを"信じる"か

(この記事はツイッターで書いた感想のまとめです) ジャンル横断的な作品なのでひと言では形容しがたいですね。混沌とした作品の中、あえて軸を探すとすれば「父の娘に対する愛情」と「信じる/信じないの境界線」の二つはブレなく最初から最後まで一貫して…

「僕らはみんな生きている」

バブルで日本の経済は絶好調、カネにモノ言わせて日系企業は海外の資産を買いあさっていました。自分はまだその頃生まれていなかったけど、ジュリアナ東京で肩パッドのお姉さんが踊り狂っている映像を見るだけでも、みんな調子乗ってたんだな、ということは…

「ゴッド•ヘルプ•ザ•ガール」

サントラを聴いていたら、なんとなくこの映画に対する不満みたいなものが再びぶり返してきたので、今さらだけど少し書き残しておきます。 「ゴッド•ヘルプ•ザ•ガール」は心を病んだ女の子がバンドを結成し、メンバーとの心の交流を通して立ち直っていく物語…

ベン•アフレック初監督作「ゴーン•ベイビー•ゴーン」

監督ベン•アフレック、主演ケイシー•アフレック。アフレック兄弟によるサスペンス映画です。非常に素晴らしい作品だったので、少しだけ感想を残しておきます。 サスペンスと言いつつ、この映画の面白さは人間の描きこみにあります。作品を見た人が読んでいる…

「フレンチアルプスで起きたこと」

こんかいは「フレンチアルプスで起きたこと」について。スキー旅行にやって来た家族が分裂の危機に陥り、なんとか落とし所を見つけていくまでを描くコメディ?映画です。 レストランで昼食中に雪崩にあった父、母、姉、弟の4人家族は、父親のとったあまりに…

「夫婦を超えてゆけ」の意味とは?「逃げ恥」大ブレイクの理由をテーマから考える

「真田丸」と並んで2016年最大のヒットドラマとなった「逃げるは恥だが役に立つ」。ミーハーな僕も話題になり始めた3話あたりから視聴を始めて徐々にハマっていきました。先週最終話を迎えて、すっかり"ロス"状態です。 振り返ってみると大ヒットの要因…

「朝食、昼食、そして夕食」温かく、どこか寂しげな日常の"食事"を切り取る

ひさびさにブログを再開しようという気になりました。イブだからといって特に予定も入れていないので何気なく見た映画がとても面白かったのでご紹介。2010年のスペイン映画「朝食、昼食、そして夕食」です。 舞台はスペインのサンティアゴ•デ•コンポステ…

芸術の都パリを爆撃から救った感動の実話『パリよ、永遠に』

舞台は第二次世界大戦も末期の1944年。戦況が悪化するナチス•ドイツは占領中の首都、パリの街中に爆弾を設置し、全てを破壊する計画を立てる。エッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、オペラ座。歴史的価値のある、フランス人が誇りにしてきた美しい街並…

黄金のアデーレ 名画の帰還

グスタフ•クリムトの名画「黄金のアデーレ」をめぐる歴史の悲哀を描いた作品。この絵画のモデルとなった女性を叔母にもち、戦時中にアメリカは亡命したオーストリア人女性が「黄金のアデーレ」はナチスによって略奪されたものであり、本来の所有権は自分にあ…

恋人たちの予感

こんかいは軽く僕が好きな恋愛映画を紹介しようと思います。恋愛映画とひとくちに言っても様々あると思うのですが「恋人たちの予感」は〈男女の友情は成立するのか?〉という永遠の課題を扱った作品で、個人的にはとても興味深いアプローチです。ハリーは「…

「シン•ゴジラ」のイースターエッグについて

番外編として「シン•ゴジラ」に登場する小ネタをいくつかご紹介します。当然ながらネタバレを含む内容になるので、ぜひ映画を見てから答え合せとして楽しんでいただきたいと思います。基本的にはツイッター上で指摘されているものをまとめたものです。もし間…

「シン•ゴジラ」レビュー後編 / 最後まで日本を諦めない"愛国"映画

「シン•ゴジラ」レビュー前編(http://starspangledman.hatenablog.com/entry/2016/08/03/091132)では、冒頭からゴジラの上陸、東京襲撃までのあらすじを追いながら、気になったポイントについて感想を書いてきた。レビュー後編では、物語の折り返し地点と…

「シン•ゴジラ」レビュー前編 / 日本の可能性を最後まで諦めない"愛国"映画

「シン•ゴジラ」のどこから語り始めればいいのか、全く見当もつかない。たくさんの余白を残した、多角的な映画だからである。タイトルに意味深につけられた「シン」も「神」「真」「新」「清」と考えれば考える分だけ漢字が湧いてくる。しかしながら一つだけ…

火花 / 全10話を振り返って

Netflix配信の連続ドラマ「火花」を全話鑑賞した。初めは各話ごとに感想をまとめていたけど、最近になって停滞していた分を一気見したので、まとめて10話分の感想を書くことにする。 上に載せたポスターにも書いてある通り、「火花」に登場する徳永と神谷…

ザ•ウォーク / "ふたり"の主人公

WTCを命綱なしで渡ったフランス人大道芸人フィリップの歩みを映像化した作品。多くの映画賞で無冠に終わってしまったのが残念なぐらい見ごたえがある。 タイトルにもある通り、この映画には"ふたり"の主人公がいる。ひとりはもちろんフィリップ。そしてもう…

アノマリサ

東京アニメーションアワードフェスティバルでみました。なんと準備不足により字幕が準備できなかったということを窓口で知らされ、抜きうちリスニングテストを受けることに。払い戻しを受けた上で、タダで観れるから気にせず鑑賞することにしたのですが、責…

ラスト•アクション•ヒーロー / 映画愛の溢れたコメディ

ハリウッド映画界きっての人気者、アーノルド•シュワルツェネッガー。オーストリアからボディビルダーとして渡米してきた経歴もつ彼の絵画の世界から飛び出してきたかのような迫力ある肉体とそれによって生み出される無敵の風貌は、強いヒーローを愛するアメ…

WE ARE YOUR FRIENDS / EDMに賭ける青春

あらかじめ言っておくと、お金と時間の限られた現状で本作をみてしまったことを少し後悔している。基本的に映画館で観る作品は楽しむよう努力しているけど、「WE ARE YOUR FRIENDS」はその余地もなくただ退屈であった。どうしてなのか、まずはストーリーから…

貞子vs伽倻子/ 二大スター、夢対決!!

「リング」の貞子と「呪怨」の伽倻子と俊雄は日本映画界でもトップクラスのスターだ。特に貞子はゼロ年代サブカルチャーのアイコンと言っても過言ではない。そんな彼らがまさかの共演を果たしたのが本作「貞子vs伽倻子」である。ことしはDCとマーベルがそれ…

アイアンマン2 / 父と子のときを超えた絆

「アイアンマン」「インクレディブル•ハルク」の成功を受け、本格的に始動したMCU。「アイアンマン2」ではSHEILD創設者ハワードスタークやSHEILDエージェントのブラックウィドウが登場し、一気に世界が広がる。「アベンジャーズ」に向けた布石を着々と打ち、…

ベン•ハー / 長い旅の末に待っていたのは…

ベン•ハーはとにかくスケールの大きな映画である。まず、上映時間が長い。4時間近くあり、途中にインターミッションが挟まれる。冒頭には序曲が流れて「これから長い旅に出るんだ」と自然に気が引き締まる。この物語の主人公ベン•ハーの人生は、おそらく世…

10 クローバーフィールド•レーン / ネタバレ厳禁の監禁スリラー

「10 クローバーフィールド•レーン」とはとても不思議なタイトルである。どうやら「クローバーフィールド」とは関係がありそうではあるけど…続編なのか、それともNYのあの惨劇と同時進行で起きた出来事なのかはわからない。あの巨大モンスターは出てくるのか…

サウスポー / "怒り"を抑え、爆発させろ!

非常に評価も高く、期待していた「サウスポー」。自分は「ロッキー」シリーズが大好きだ。そしてボクシング映画にハズレなしだと思っている。その考えに間違いはなかったのだが、アレレ、ちょっと想像してたハードルを下回ってしまったぞ、というのが率直な…

Netflix 火花 第3話 / 芸人としての未来

第3話はスパークスがオーディションに挑戦して失敗を繰り返す様が描かれる。テレビに出たいという気持ちは常にあって、チャンスも与えられているのに、全然思っているような結果を出せないもどかしさ。本当は自分の実力不足のせいなのだけど、イライラが溜…

月に囚われた男 / 生きることの意味を問う哲学的SF

ダンカンジョーンズ監督のSF作品。資源開発の技術が発達し、すべてのエネルギーを月の鉱石で賄うようになった近未来、管理者としてひとり月に取り残された男が採掘車の事故を機に衝撃の事実を知る。人間の存在意義にまで掘り下げた哲学的SFだ。 まず、この作…

オズの魔法使 / いつまでも色褪せない魔法の世界

まず、これが1939年の映画ということに驚きである。当時としても珍しいフルカラーでの製作。原色を散りばめたカラフルな映像は刺激的で見ていて疲労するが、現実離れしたオズやエメラルドシティの世界観にピッタリだ。カラー撮影なので"黄色いレンガの…

インクレディブル•ハルク / MCU不遇の一作

タイトルに不遇と付けてしまったけど、言うほど扱いが悪いわけでもない。ただ、ファンからも公式からも忘れ去られた地味な作品であることは間違いない。MCUが大好きでブルーレイで何度も見返す自分も、「インクレディブル•ハルク」だけは一度しか見ていない…

アイアンマン / MCU神話の始まり

これから定期的にMCUシリーズの作品のレビューを順を追って書きたい。1本目はもちろんシリーズ1作目にして今なおトップレベルの人気を誇り続ける「アイアンマン」である。 「アイアンマン」公開当時、今や現代の神話と表現しても差し支えないMCUという壮大…

サウルの息子 / "映さない"ことのリアル

度肝を抜かれた映画だった。家の小さなテレビ画面では得られない体験。絶対に映画館という空間でないと楽しめない作品だ。4:3という画面比を最大限に生かした内容になっている。 「サウルの息子」の題材となっているのはゾンダーコマンドと呼ばれるユダヤ人…

Netflix 火花 第2話 / 夢に向かっていく中で

第2話では、オーディションを受け、テレビ出演のチャンスを掴もうとする徳永が、東京に進出(本当は相方が事件を起こしたせいで大阪を追放されていた)してきた神谷と親睦を深めていく。徳永は一生懸命努力して、ネタを作り、相方と練習を積んでいるけど、…

64-ロクヨン-前編 / 警察という巨大組織に生きる人たち

横山秀夫原作のサスペンス映画の前編。1週間しか存在しない昭和64年に起きた誘拐事件"ロクヨン"の真相が時効直前になって徐々に明かされていく…主人公は刑事時代にロクヨン事件の捜査をし、いまは広報部長の三上。彼を取り巻くパーソナルな問題も同時進行…

デッドプール / ヒーロー映画の壁を突き破れ!

全米公開から4ヶ月。待ちに待ったデッドプールがついに日本上陸。ヒーロー映画としては珍しいR指定にもかかわらず記録的大ヒットを各国で樹立。期待値を上げに上げまくって劇場へ向かったが、とても満足のできる内容だった。まずいちばんの魅力はデッドプー…

Netflix 火花 第1話 / 真夏の出会い

お笑い芸人の又吉直樹が執筆し、芥川賞を受賞したことで話題になった作品が待望の映像化。期待以上にハイクオリティな出来に驚いた。売れない芸人徳永が、真夏の花火大会のライブで偶然出会った先輩芸人の神谷に深い感銘を受け、弟子入りを申し出るところか…

ヘイル、シーザー! / 黄金期ハリウッドの舞台裏

コーエン兄弟最新作。彼らの作品はどれも面白く、レベルが高いのは承知しているけど、個人的に大当たりという作品もないので評価しづらいクリエイターだ。こんかいも残念ながらそのパターンで、楽しみつつもそんなに好きにはなれないという結論に至った。よ…

ヒメアノ〜ル / すぐそばにある狂気

公開前の試写会段階から評判の良かった「ヒメアノ〜ル」がついに登場。前半はラブコメ、後半はサイコサスペンスという異色の組み合わせながら絶妙なバランスで楽しめるエンタメに仕上げた期待通りの秀作だった。いつも通りネタバレを含むので未見の人は注意…

ストレイト•アウタ•コンプトン/ことばで世界を変える

ギャングスタラップの分野を開拓した伝説のヒップホップグループN.W.A.の栄光と挫折を描く伝記映画。N.W.A.という名前にピンとこなくても「アイスキューブが所属していた」といえば映画好きの人はわかる。アイスキューブは現在ハリウッド映画界の中でもヒッ…

世界から猫が消えたなら / じぶんの人生に必要なもの

「世界から猫が消えたなら」の主人公には名前がない。"ぼく"目線による人生の振り返りがこの作品の骨子になっている。もし1日だけ寿命が伸ばせる代わりに、じぶんの人生の大切なものが世界から消えてしまったら、その引き伸ばされた生に価値はあるのだろうか…

レヴェナント 蘇りし者 / ディカプリオ渾身の演技を観よ!

イニャリトゥ監督最新作。北米開拓初期に生きたひとりの男の半生を基に構築された究極のサバイバル日記である。 まず特筆すべきはその映像美。どうやって撮ってるんだ?の連続。自然光を生かして映し出すアメリカの大自然は圧巻の一言。枯れ木と荒涼とした…

SHE'S BEAUTIFUL WHEN SHE'S ANGRY / 力を合わせて世界を変える

男と女。どれだけ人間が高度な文明を築こうと変わらない差異であり、永遠の課題だ。いつの時代も人々は男女の問題に悩んできたし、ある意味、人類の歴史は男女の歴史と共に進行してきたとも言える。そしてある時、人々はひとつの発見をした。解剖学的な性差…

二郎は鮨の夢を見る / なぜ寿司"職人"なのか

時々料理の世界でも"職人"というワードを使う。お菓子職人はたまに使うけど、ラーメン職人とかサンドイッチ職人なんて言い方は普通しない。しかし、もしかしたら僕の中だけかもしれないけど、寿司"職人"という言葉には他にはない特別な響きを感じる。お菓子…

テラフォーマーズ / "虫ケラ"たちの戦い

試写会の評判が非常に悪く、特に極端な言説で有名な前田有一が酷評したことである種の炎上にまで発展した「テラフォーマーズ」。GW映画の強力ラインナップに埋もれてしまい、批評的にも興行的にも不満足な結果に終わってしまった。しかし言われるほど酷い映…

ヒーローマニア -生活- / 「キックアス」とは異なるヒーローへのアプローチ

フリーター、ニート、サラリーマン、女子高生。パッとしない普通の人々がヒーローとして活動したら?「キックアス」のカルト的人気とその大成功を受けて多くのフォロワー的作品が製作された。「ヒーローマニア -生活-」もその中のひとつと言えるだろう。原…

世界にひとつのプレイブック/少しイカれたきみが、なぜか希望の光。

「Silver Linings Playbook」という原題は少々理解するのが難しい。「Silver Lining」は直訳すると銀の裏地。どんな雲も後ろには太陽があるから縁は光り輝く。転じて、「逆境の中の希望の光」という意味になる。「Playbook」は山口百恵の歌ではなく、アメリ…

フラッシュポイント/トラウマを越えてゆけ

これまでアメコミについて考えをまとめる機会があまりなかった。自分も何冊か読んでいるのだが「バットマンvsスーパーマン」に影響されて初めて買ったDCコミックスのクロースオーバー大作「フラッシュポイント」はこれまででいちばん面白かったので、ぜひ感…

ちはやふる 下の句 / 千早の蒔いた種

下の句は上の句と完全に地続きの物語になっている。さいきんの邦画はやたらと前後編構成にして興行収入を稼ぐセコいスタイルが主流だ。そして時々失敗している。たとえば「進撃の巨人」は2部作構成にした結果、ただでさえ薄い内容が無に等しくなった。おか…

ちはやふる 上の句 / 仲間と共に戦うということ

ちはやふるの上の句と下の句を鑑賞。どちらも素晴らしい青春映画だった。2作は密接に繋がっているのでまとめて語りたいところではあるが、思いつくままに感想を書きたいので、あえてバラバラに記事を作る。したがって本稿では上の句について。次稿では下の…

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い / 911文学の金字塔

こんかいはジョナサン•サフラン•フォアの同名小説の映画化作品。自分はこの原作小説がとても好きだ。奇妙なタイトルに惹かれて手を取り、みごとにハマった。エモーショナルなストーリー、内容と深くリンクした写真や絵を挿入することでビジュアルに訴えかけ…

好き好き大好き超愛してる。/ 純粋すぎる愛のはなし

ブログのタイトルに「えいがのはなし」と付けておいて映画以外の話をするのは自分でもどうかと思うけど、特に人に見せるつもりで書いてないので(もちろん見てもらえたら嬉しい)気にせず舞城王太郎作の純愛小説について感想をまとめたい。 思い返せばゼロ…

アイアムアヒーロー / 日常が破壊される恐怖

公開前から評判になっていた本作。広告ではあまりビジュアルを出していないものの、原作の内容をみればわかると通り、ゾンビ映画である。そのようなジャンルに対して苦手意識があって見てこなかったのだけど、邦画でゾンビ映画という珍しさに惹かれて劇場へ…

ズートピア / キャラクターと世界観の魅力

前回の記事では現代社会における差別と偏見を扱った本作のテーマについて意見をまとめた。今回は映画を見ながら純粋に「ここ良い!」と思った点についてひたすらリストアップしたい。 はじめはメインキャラクターのジュディとニックのはなし。ジュディはこ…